どうなるエミネムvsニュージーランド国民党?侵害裁判開始

5月 10th, 2017


2014年の秋に当ブログで取り上げた「ニュージーランド国民党がエミネムの曲を無断使用?」という話、その後の成り行きを気にしてたんですが、2年半経過してついに法廷に持ち込まれました。
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今回のニュース記事
「Nats party boss thought ad music was 'risk-free’」

「エミネムの"Lose Yourself"の使用を巡り、同曲がニュージーランドの法廷で再生される」

この件のポイントは、エミネムの曲がニュージーランドの法廷で流れた、ということではないです。
気になるポイントは、エミネムが訴えている内容と相手が本来の著作権侵害当時者ではないのではないか、ということです。

ニュージーランド国民党は、エミネムの「Lose Yourself」そのものを選挙キャンペーン映像に使用したのではなく、「Lose Yourself」に似た感じの業務用音楽ライブラリーの中の1曲を正しいライセンス処理をした上で使用したということになっています。

2年半前の記事では出てなかった情報として、今回明らかになったのは、実際に使用されたライブラリーの曲のタイトルが「Eminem-Esque」(エミネム風)とのこと。これって明らかに狙って作っていますね。著作権侵害(複製権、翻案権)についての判断で言われているのは「依拠性」と「類似性」。この両方が必要です。今回のケースはこのタイトルを付けている時点で明らかに依拠性はアウトですね。(まあ、タイトルが違っていたとしてもこれだけ有名な曲を知らなかったというのは通用しない気はしますが。)あとは類似性でアウトという判定になれば、著作権侵害が認められます。

ただ、それは訴えられた相手がこのライブラリー曲を作った作曲家とライブラリー会社だった場合。今回訴えられているのはそうではなく、その先の使用者です。使用者は善意の第三者のような気がしますが・・・。

しかし、ここでまた話がややこしくなりそうなのは、この映像の監督が、映像の初期のバージョン(おそらくプレゼン用であろう)で「Lose Yourself」そのものを使用していたと言っていること。ということは、使用者であるニュージーランド国民党も「Lose Yourself」という曲自体を認識していて、「似た曲」の使用を望んだのではないか、ということ。法廷の最終判断がとても気になります。

さて、プレゼン用やクライアント試写用の映像に映像制作者が市販楽曲を使ってしまい、その後にライブラリー音源に差し替えるものの、クライアントに元の曲のイメージが付いてしまっているので、どうしてもそれに「似た曲」を探して付ける、ということは日本でもよくある(あった)ことです。この裁判と同じようなことが起こるかどうかは別として、同様なことが起こるリスクがあるということです。

また、今回の記事中の監督のコメントでもう一つ問題なのは、プレゼンバージョンは公共に上映されるものではないので「Lose Yourself」を使っても問題ないと言っていることです。これは間違ってます。この時点で立派な著作権侵害ですね。気を付けましょう。


問題のCMはこれ。


エミネムの原曲はこれ。