エミネム、ニュージーランド国民党に勝訴

10月 26th, 2017


3年前から注目し続けてきたこの件、ついに裁判でエミネム勝訴という判決が出ました。

http://www.telegraph.co.uk/news/2017/10/25/judge-quotes-eminem-lyrics-new-zealand-party-found-guilty-ripping/

http://www.bbc.com/news/world-asia-41744547

https://www.theguardian.com/music/2017/oct/25/eminem-wins-600000-after-new-zealand-political-party-breached-his-copyright

事の発端は、ニュージーランド国民党の選挙キャンペーンの動画にエミネムの代表曲「Lose Yourself」によく似た「Eminem-Esque」(エミネム風)というタイトルの業務用音楽ライブラリーの楽曲が使われていた、ということ。
それを、エミネム側が曲の使用を許諾した覚えがないとしてニュージーランド国民党を訴えていたわけです。

この件に関係する登場人物を整理してみます。
A: エミネム
B: 「Eminem-Esque」という似た曲を制作した作曲家
C: 「Eminem-Esque」をリリースした業務用音楽ライブラリー会社
D: Cのオセアニア地区のサブ出版である業務用音楽ライブラリー会社
E: キャンペーン映像のディレクター
F: ニュージーランド国民党

通常、日本で「盗作」の著作権侵害裁判だと、Aが作曲家Bとライブラリー会社Cを、複製権侵害及び/または翻案権侵害で訴えるというのが普通です。しかし、今回はすべてを飛び越えてAがニュージーランド国民党Fを訴え、かつ勝訴しました。日本円でおよそ4,700万円の損害賠償額とのことです。

決め手となった要素の一つとして考えられるのは、キャンペーン映像のディレクターEがプレゼンの際に実際にエミネムの「Lose Yourself」を映像に付けてクライアントであるFに見せており、その後「Lose Yourself」は使えないので似た曲を探して今回問題になった曲を見つけ、それをキャンペーン映像のBGMに使用したという事実です。F自身にも責任があるという判断がなされる理由となった可能性があります。

これは日本の広告クリエイティブの方々にも注意していただきたい事例となります。
日本でも、市販CDの既存のアーティスト楽曲などを映像に付けてプレゼンをする、いわゆる「イメージ選曲」なる手法がよく使われますが、それによって実際に使用する曲を決める時に(選曲、作曲に関わらず)、プレゼン時に使用した曲に似た曲を探す(または作る)ということがよく行われます。今回の件はまさにその事例です。似た曲を作ってリリースしていたライブラリー会社にも問題はありますが、仕事の進め方の手法にも問題があるという一つの例になるであろうと思われます。

ちなみに、敗訴した時の賠償責任を事前に考慮したかどうかはわかりませんが、この件に関連して、DがB, Cを訴えるという別の訴訟も行われています。